chamoxの日記

アラサー総合職共働き女の日常をつぶやいています

パラレルワールド・ラブストーリー 原作の感想

久々に小説を読みたいなと思い、少し前に映画化されていた東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーを読んでみました。




以下、感想です。(ネタバレを若干含んでいるのでご注意ください)




まず、私はパラレルワールドというタイトルに騙されました笑   パラレルワールドの恋愛小説というと、私は勝手に「君の名は」的な平行世界を期待していたのですが、いわゆるパラレルワールドの話ではありませんでした。パラレルワールドという言葉は一種の比喩だったんですね。一番最初の主人公たちの出会い方は少し「君の名は」を思い起こさせるロマンチックな感じだっただけに、少し読むとあれれ?と肩透かしをくらいました。 


この小説は過去と現在の描写が繰り返される構造になっていて、過去と現在の矛盾が肝になっていると思うのですが、結構早い段階でその矛盾の理由が分かってしまって、東野圭吾さんお得意の?どんでん返しとか、あっと驚くような仕掛けがあまりなかったのが残念でした。


あと、登場人物の中の女性、麻由子(三角関係の中心になる人物)に全く感情移入できなくて、それどころかイラついてしまったのもマイナス要素でした。

麻由子は恐らく人として智彦に惹かれて智彦の彼女になったのでしょうが、女としては完全に崇史に惹かれていています。その事が智彦にも崇史にも気づかれる程ダダ漏れてるくせに、「私はどっちも傷つけたくないの〜」みたいに少女漫画のヒロインぶってます(実際ヒロインなんですが)。


智彦を拒んでおきながら崇史と寝るなんて(嫌がってるふりして絶対喜んでやってます)、そういう態度に2人は振り回されてるんだよ💢と終始文句を言いたくなりましたが、男性にとってはこういうのが魔性の女なのでしょうね…。

美人でスタイル抜群で賢くて控えめという最強女子なので仕方ないですね。

私はすごく嫌いなタイプでしたが笑、そういう女性のズルさがとてもリアルで、人間の弱さの描写がさすがの東野圭吾さんでした。


色々文句も書いてしまいましたが、なんだかんだで先が気になってしまう文章でページをめくる手が止まらず、数時間で読了しました。最後はどう収束させるのかが気になったのですが、その後は読者の想像に委ねる…という感じで終わりました。確かにあれ以上は蛇足になりそうだから良い終わり方なのかな、と個人的に思いました。(とはいえ、スッキリ❣️という感触はないですが😵)


三角関係での人間のズルさとか心の弱さとか、そういう描写を楽しみたい方にはオススメの本です。私みたいに「パラレルワールドで出会った運命の人との恋愛💕」を期待している人間には全くオススメしません笑


余談ですが、今でこそVR(仮想現実)が生活に取り込まれて、身近な存在になってきましたが、仮想現実や記憶改編などを20〜30年前にリアリティのある技術として物語の核にするのはさすがだと思いました。

私達が事実として認識しているものは全て私達の脳が信号として認識しているものであって、それはすごく脆いものなんだなと思わされます。


話は逸れますが、この小説を読んでいる時、「水曜日のダウンタウン」という番組で、安田大サーカスのクロちゃんを泥酔させて、その間にVRの装置を着けて、目を覚まして時にセクシーお姉さんの映像を流したらどういうリアクションをするのか検証するというコーナーがあり、ここでのクロちゃんの反応がぞっとするようなものだったことを思い出しました。演技かもしれませんがクロちゃんはVRであることに気付かず、女性に興奮して抱きつこうとしたり、とても生々しい反応でした。この番組を思い出して、麻由子は崇史の作り出した妄想…?などと邪推してしまいました。


VRや記憶改編もあまり行き過ぎると何が真実で何が真実か分からなくなって、自分自身も見失いそうです。今見ている風景も、仮想現実として見させられているかもしれませんし、過去の記憶も全て外部からインプットされまものかもしれません。こわいこわい。